最も危険。中性浮力ができないとどうなる?

ホバリング スキルアップ

ダイビングライセンスの講習には合格したけど、なんとなく不安がある。実はそんな方はたくさんいます。具体的にあなたもこんな不安を感じていませんか?

呼吸が苦しく感じる

体力的にきつい

みんなの泳ぐペースについていけない

体のコントロールが効かない

耳が抜けにくい体質

現場で多くのダイバーから悩みや不安をヒアリングしてきましたが、ほとんどの初心者ダイバーはこんな悩みを抱えています。一見それぞれの解決策は個別のように思えますが、これらの不安は「中性浮力」をマスターすることで解決できちゃいます。

それでは本日もそーさんが現場の経験をもとに、中性浮力について徹底的に掘り下げて、解決策まで提案したいと思います!

そもそも中性浮力って?

ダイバーなら既に知っているかもしれませんが、海の中には浮力っていう概念があります。さらに浮力は以下の三つの状態に分けて考えます。

浮いているもの=プラス浮力(浮き輪や、空のペットボトル)

沈んでいるもの=マイナス浮力(石や鉄製のアンカーなど)

浮きも沈みもしないもの=中性浮力(中層を漂っているクラゲなど)

ダイバーはBCDという器材を使い浮力を自由にコントロールすることができます。必要に応じて、プラスにしたり、マイナスにしたり、中性浮力にしたりして使い分けていきます。

プラス浮力やマイナス浮力は簡単な操作で作ることができますが、中性浮力の状態を作るには技術が必要になります。今回はそんな中性浮力の必要性と、どのように習得すれば良いのか、効率の良いトレーニング方法を解説していきます。

中性浮力ができないとどうなるのか?本当のリスク

結論から伝えると、中性浮力が上手くできないと以下のリスクがあります。

  • 環境へのダメージ
  • 怪我のリスク
  • 鼓膜の損傷
  • エア切れのリスク
  • 減圧症のリスク
  • パニック

このようなリスクに晒されていたら当然ダイビングを楽しむことができません。何より自分自身の安全性を低下させてしまいます。

それでは、それぞれのリスクと中性浮力の関係性についてみていきましょう。

環境へのダメージ

環境へのダメージで、よく言われていることですが、ダイビングでは二つのNG行為があるので覚えておきましょう。

一つ目は砂の巻き上げです。砂地を泳いでいる時にフィンで砂を巻き上げていくダイバーをよく見かけます。これは周囲のダイバーやその後に潜るダイバーの視界を悪化させてしまいます。巻き上がった砂が珊瑚やカイメンなど自力で動けない生物に付着してしまい、生物への悪影響を及ぼします。

二つ目はフィンで珊瑚などに直接接触し、損傷を与えてしまうケースです。これは言うまでもなく環境に対して悪影響です。伊豆半島のダイビングスポットを潜っているとよくわかりますが、人が入りやすいエリアのソフトコーラル類は壊滅的で岩肌は丸ハゲ状態になってしまっています。

どちらもマイナス浮力が原因で起こるので、中性浮力が上達すればこのような問題は解決します。

怪我のリスク

中性浮力ができていないダイバーは、すぐに手や足を使います。不用意に水底に手をついたりすると、ウニやサンゴ、貝殻などに触れてしまい怪我をしてしまうことがあります。

水中は皮膚が吸水してて柔らかくなっているので特に切り傷がつきやすいです。対策としてグローブを用いることもありますが、ウニには無効。貫通して刺さってしまいます。

ちなみにモルディブ等の世界的なリゾートではグローブの着用が禁止されている場合があります。それはグローブをして不用意に生物に触れないようにするためです。

環境へのダメージも含め、水底への接触は極力避け、必要ならば水底の状況を確認し、そっと着底する技術を身につけたいですね。

もちろんこのトラブルも中性浮力をマスターすることで解決できます。

エア切れのリスク

エア切れはダイバーにとっては最も怖いトラブルの一つだと思います。中性浮力とエア切れがどのように関係しているかと言うと、エアの消費量は、呼吸回数が多いほど早くなります。呼吸回数が多くなる原因のほとんどは、動き過ぎて呼吸が乱れてしまっているからです。

マイナス浮力で泳いでいるとフィンが必要以上にバタバタと動いてしまいます。その上、なかなか前に進まないので焦ってしまい、呼吸回数も増加していきます。結果、エア切れのリスクが上がってしまうわけです。

エア切れについて詳しく知りたい方はこちら→エア切を起こさないために大事なこと

鼓膜の損傷の

耳抜きに苦手意識を持っている方は多くいますが、主に原因は二つあります。一つはやり方がそもそも間違っているパターンです。もう一つが浮力のコントロールが効かず深度が意図せず落ちてしまうケースです。

業界では潜水墜落と呼ばれ、耳が抜けないまま、深度が下がっていくことによって最悪のケース鼓膜に穴が空いてしまいます。実際にこれは現場でよく遭遇するシーンで、僕も細心の注意を払っていますが100%墜落を防ぐのは無理です。

この場合もやはりマイナス浮力が原因となっていて、浮力のコントロールができていれば防ぐことができます。

初心者ダイバーだとやり方が間違っている上に、深度コントロールも効かないので耳抜きに苦戦している方は多いです。

こちらの記事で耳抜きの攻略法を徹底解説しているので、耳抜きに自信のない方はぜひご覧ください。→耳抜に悩めるダイバーへ|勘違いと、解決策を教えます

減圧症のリスク

初心者の頃は減圧症ってイマイチよく分からないですよね。僕も実際にそうでした。ここでは難しい理論は省いて、簡潔にお伝えします。

減圧症を防ぐために大事なのは浮上速度をきっちり守ることです。しかし浮力のコントロールが効かずプラス浮力になってしまった場合、浮上速度がどんどん早くなり、水面まで浮いてしまうことがあります。浅くて短いダイビングなら減圧症にならないこともありますし、深く長いダイビングをしていた場合は減圧症になってしまうことがあります。減圧症は時に後遺症を残す重大な傷害なので絶対に予防しなくてはなりません。

予防方法はもちろん中性浮力をマスターし、浮上速度をコントロールすることです。

減圧症について詳しく知りたい方はこちら→減圧症を防ぐには|よくある勘違いと、絶対に覚えておきたい知識

パニック

パニックはダイビングでは最も危険な状態です。どんな状況でもパニックになってはいけませんが、中性浮力ができていないとパニックに陥る可能性があります。

ダイバーがパニックになる原因は、ほとんど呼吸に関するトラブルです。水を誤飲してしまい気道に入ってしまったり、過呼吸状態になって、呼吸が苦しくなってしまうことです。どちらも正しい呼吸ができていない事が原因です。

正しい呼吸ができなくなってしまう理由は、もちろんマイナス浮力による運動過多です。業界用語でオーバーワークと言います。

危険な状態のオーバーワークとは

日本語で言うと「動き過ぎによる過労」です。このオーバーワークは必ず誰もが一度は通る道ですが、上に解説したリスクの「パニック」「エア切れのリスク」と繋がってくるので原因と対策を認識して、いち早くこの状態を脱しましょう。

直接的な原因はマイナス浮力によるものです。マイナス浮力になってしまうと、本来は前方へ進むためのフィンキックのはずが、上方向へ行くための動力に使われてしまいます。

自然と姿勢は立ち気味になり、これがさらに抵抗を生み、推進力がなくなります。他のダイバーに置いていかれないように、フィンキックが激しくなります。結果、呼吸が乱れてしまいパニックや、エア切れのリスクが高くなってしまうのです。

厄介なのはオーバーワークは自覚症状がないところです。自分では必死にキックしているのになぜか他のダイバーに着いていけない。どんどんみんなから離れていく、そんな状況にメンタルがやられ、更に不安を誘発させてしまうんです。

解決策は競輪選手並みの健脚になるか、中性浮力をマスターする以外にありません。

中性浮力ができるとこんなにメリットがある

環境への配慮
水底に触れることなくダイビングができるようになる。砂も巻き上げず周囲のダイバーにも配慮ができるようになる

怪我が減る
手を使わなくなる。触れる場合も落ち着いてゆっくりと安全確認ができる。

耳抜きが楽になる
耳抜きがしやすい速度で潜降できるようになる。耳が抜けない時には止まっているられる。

エア切れしにくい
エアの消費速度はスローになる。落ち着いているため残圧確認も忘れにくい。

減圧症になりにくい
浮上速度のコントロールが効くようになる。ゆっくり浮上することで減圧症を防ぐことができる。

パニックになりにくい
中性浮力ができていて落ち着いている人がパニックになることはない。

安全停止が楽
ロープを使わずホバリングで止まることができる。

魚との接近度が高くなる
水中写真を撮影するときや近くで観察したい生物に、警戒心を与えず接近できる。ブレブレ写真も卒業できる

体力がなくても、疲れにくい
少ないキックで進むようになるので疲れにくくなり、体力的に楽になる。流れの強い場所でも有利になる。

ポイントの選択肢が広がる
ロープが要らないのでどんなポイントでも潜れるようになる。ドリフトポイントなど。

はい!いかがでしょうか。まだまだありますが、キリがないのでこれくらいにしておきます。とりあえず中性浮力の恩恵がハンパじゃないってことを理解していただけたと思います。

まとめると中性浮力がもたらす最大の恩恵は「ダイビングの楽しさと安全性」ということになりますね。これだけの恩恵がある中性浮力、今すぐマスターしたいと思いませんか?次は中性浮力の習得方法について見ていきましょう。

中性浮力をマスターするには

中性浮力の教え方はインストラクターの色が出るところで、人によって様々な指導方法があると思います。ゲーム感覚で、遊びながら身につくように工夫したりしているインストラクターをみるとあの人上手いなーって感心することがあります。

今回は僕がいつもゲストにトレーニングしている手順を公開します。この手順でやれば大抵の方は即日でかなりの上達が見込めるはずです。

STEP1、フィンピポッドをマスターすべし

フィンピポットとはフィン先を水底に着いた状態で、呼吸だけで上下するスキルです。

BCDの空気量を適正にすることはもちろんですが、呼吸を効果的に使えないとコントロールが効きません。そのためにフィンピポットを何度も繰り返し、自分の肺がどれくらい浮力に影響しているのかを体感する必要があります。

ここでキモになるのは「時差」です。呼吸のタイミングと浮力が変化するタイミングにはズレがあるのでこの時差を体感してみましょう。

STEP2、立ち姿勢でビタ止め

フィンピポットが自由にできるようになったら、フィンの先だけを水底に着いて、今度は上下させないように止まります。フィンピポットで感じた時差を応用することで、ピッタリと止まることができます。

STEP3、ホバリングしてみる

そのまま息を大きく吸って水底から離れます。フィンが離れたのを感じたら今度は息を吐き、トリム姿勢を整えます。ここで一気に難易度が上がります。その理由は呼吸で上下のコントロールをしつつ、姿勢のコントロールも同時に行わなければならないからです。

キモは指標物を捉えておくこと、姿勢のコントロールは視線を活用していくことです。

STEP4、中層でホバリングしてみる

水底が指標物として使えない中層でのホバリングはさらに難易度が上がります。ここでは水面を指標に、ダイブコンピュータで常に深度をチェックしブレないようにコントロールします。

STEP5、深度変化をつけて泳いでみる

単一深度でのホバリングがマスターできたら、深度変化にアジャストしていくトレーニングです。ここではあえて深度変化のあるコースを泳ぎます。途中、途中にホバリングを挟みながらマイナス浮力になっていないかチェックしたり、中層でのホバリングを練習します。

STEP6、中層で作業しながらホバリングする

さらにハイレベルなのは中層で作業しながらホバリングです。計算問題をやってみたり、しりとりをしながらホバリングをしてみます。このトレーニングでは視野の広さというスキルが必要になります。ここまでできれば完全に浮力のコンロールはマスターしたと言って良いでしょう。

トレーニングをしてもらうには

近隣のダイビングショップか、通い付けのお店で、まずはスペシャリティコースに参加してみましょう。ピークパフォーマンスボイヤンシー(PADI)、パーフェクトボイヤンシー(SSI)では浮力コントロールに特化したトレーニングができます。世界中どのダイビングショップでも一定水準のトレーニングを受ける事ができ、スキルアップに期待できます。

当店では1DAYコーチングというコースを開催しています。まず、今の現状診断から始まり、個々に合わせた内容で、スキルアップできるプログラムになっています。このコースの良いところは、内容の自由度が高く、達成条件に縛られることなく受講生のニーズにメットする事ができるところです。不安のある方、今の自分のレベルが分からない方、ブランクの空いている方にもおすすめです。

サンライズおすすめのトレーニングプラン、1DAYコーチングについて詳しく知りたい方は以下からどうぞ。

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インストラクター歴18年。沖縄で修行を積み、伊豆半島へと拠点を移す。伊豆のダイビングシーンに可能性を見出し、川奈を拠点にダイビングショップ【SUNla伊豆】を立ち上げる。現在はインストラクタートレーナー(インストラクターを教育できる最高資格)として若手インストラクターのコーチングだったり高度なダイビングのガイドやトレーニングを行っている。

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