エア切れ経験者が語る、ダイビングでエアが切れた時の対処法

ダイビング残圧系 スキルアップ

これからダイビングを始めたい人や、ダイビング経験が浅い人が最も不安に思うことの一つは

「エアが切れたらどうなるの?」

という疑問でしょう。

僕自身も初めはビビってましたが、正しく理解すれば不安に感じることもなくなります。18年間で1400名以上の講習を行ってきたそーさんが、今回も実際の例をもとにエア切れについて徹底解説していきます。

注意:この記事は一部不安を煽るような内容になってしまいますが、僕はこの18年間、一度も死亡事故に遭遇したことはありません。今回の例題は僕が体験したヒヤリハットや、過去の事故事例をもとに検証しています。読者ダイバーの安全度に貢献できることを願い、執筆しています。ご理解いただければ幸いです。

実際エア切れになることはある?

事実として、あります。

約10000本のダイビング経験がある僕が、意図せずエア切れになった経験は3度あります。また恥ずかしながら、ゲストがエア切れになってしまったケースも経験があります。

しかし、エア切れが原因で危険な状態に陥ったことは一度もありません。

エア切れ=危険ではなく、エア切れ時に正しい対処がきないことが危険につながります。

また絶対守らなければならないルールを違反してしまうと死亡に至る重大事故につながります。

エア切れは、正しい対処法と、ルールさえ守れば全く怖いものではなくなります。

なぜエア切れが起こるのか?

以下のリストに注意。これらはエア切れを起こす要因です。

  • 器材セッティング時の残圧確認を忘れた
  • ダイビング中の残圧確認頻度が低かった
  • 運動量が上がりエアの消費が早くなった
  • 深度が深くなりエアの消費が早くなった
  • エアの消費が早い体質だった
  • バルブが全開になっていなかった
  • 残圧の報告を怠った
  • オクトパスのフリーフロー
  • 単独潜水

どの要素も単体ではエア切れにつながりませんが、これらのリストが複数個重なるとエア切れを招くことになります。

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エア切れになった二つの実例

まずは僕自身のエア切れ談です

西伊豆の雲見にダイビングツアーへ行った時のことでした。1ダイブ目終了後、ゲスト器材のタンクチェンジを行い、2本目にエントリーしました。

エントリーして5分ほどでエアの供給が渋くなり、残圧計を確認すると、すでにゼロになっていました。僕はゲストのタンクをチェンジしたことですっかり自分のタンクも新しくなっていると思い込んで、残圧確認を疎かにし、エア切れになってしまいました。

ゲストが経験したエア切れ談

ホームの川奈でダイビングしている時でした。1ダイブ目に参加者のエア消費をモニタしたところ、一人だけエアの消費が爆速だったため、2ダイブ目はそのダイバーの残圧のみを確認していました。

そんな時に予想外の別のゲストが、他のダイバーからエア供給を受けていることに気がつき、すぐに駆けつけました。僕はなぜ?と思いながら残圧計を見ると、まだ70も残圧が残っているのです。

しまった、と思いバルブを確認するとバルブが全開になっていませんでした。バルブが少ししか開いていない状態では、エアの流量が少なく、残圧が残っているのにも関わらず、エア切れと勘違いすることがあるので注意しなければなりません。

エア切れから事故になったケース

メンタルブレイクによる事故

過去の事故例を検証してみると、全く空気が出ない状態ではなく、まだ呼吸ができる程度のエアを残して、意識を失ってしまっているケースがあります。

つまりエアはまだ吸えるにも関わらず、パニックになってしまい事故に発展しているケースがあるということです。

実際に僕が担当してたゲストで、まだエアが50残っているのにエア切れのシグナルを出しながらプチパニックになっている方もいました。このような状態では冷静な判断ができなくなり、水を誤飲してしまったり、急浮上をして減圧障害になってしまうことも想定できます。

死亡事故で最も多いのが単独でエア切れ

僕が知っている伊豆での重大事故事の中で最も多く(病気を除く)、危険度が高いのが単独でのエア切れです。対処法は後ほど解説しますが、単独でエア切れになった場合、かなりの訓練を積んでいるダイバーでないと対処が難しいと思っておいた方が良いです。

今回の実例は抽象的にお伝えします。

例1)
潜り慣れたダイビングポイントでいつものように単独でダイビング。その後戻らずエア切れ状態で発見された。

例2)
2名でセルフダイビングを実施。1名のエアが少なくなったので先にエキジット。バディが戻らないので捜索したらエア切れ状態で発見された。

例3)
数名1チームでのファンダイビング中、エアが少なくなったため、ダイビングを中断することにしが、指示に従わない(気が付いていないのかもしれません)1人が水中に残され、チームから離脱。インストラクターは再会を試みるが、再開できず。その後遠く離れた場所で、エア切れ状態で発見された。

どの例もルール違反をしていることと、共通点は単独であるということです。

エア切れを予防する方法

1、残圧確認

まずはどんな時も残圧確認を忘れないことです。特に以下のようなコンディションではいつもよりこまめに残圧を確認してください。

  • エアの消費が早い人
  • ダイビング深度が深い時
  • 運動量が多い時
  • 寒い時

このような理由でエアの消費が早くなることはありますが、予期できないオクトパスのフリーフローなどもあるので、どんな状況でも確認を怠らないようにしましょう。

目標は残圧計を見なくても常に自分の残圧を言い当てられるくらいになることです。

2、バルブの開閉確認

バルブが半開きだと、エアの供給が追いつかずエア切れと勘違いしてしまいます。厄介なのは浅い深度では普通に吸えて、深くなると吸えなくなってくるというトラップがあるので注意してください。必ずバディに確認してもらいましょう。

セルフチェック方法は、レギュレータから呼吸ながら、残圧計を確認してみてください。ゲージの針が動くようだったらバルブが完全に開いてない状態です。

3、残圧報告

よく自分では確認していても、報告を怠るゲストがいます。残圧管理はインストラクターではなく、Cカードを保有しているダイバー自身の義務なので、報告が無ければガイドはダイビングを続行してしまいます。

残圧報告は折り返し残圧と最低残圧の二回が必要になります。折り返し残圧の報告が無いと、安全な残圧を残して浮上ポイントまで戻ってこれなくなってしまうので、どちらも重要度は高いです。一般的な折り返し残圧は100で、最低残圧は50となっています。

4、逸れた時の手順を守る

40歳以下の健康なダイバーで死亡事故につながるのは、ほとんどが逸れている時です。

通常は、何らかのトラブルに遭遇してもインストラクターが近くにいれば、すぐにレスキューにあたることができ、かなりの確率で助かります。しかし逸れている時は救助者がいないので、捜索から始め、見つかった頃にはもう手遅れになっていることがほとんどです。この手の事故は、今も昔も変わらず起こり続けています。

解決策は簡単で、以下のルールを守るだけです。

チームと逸れてしまったら、絶対にその場を移動せずに、残圧を確認して、深呼吸します。その場で浮上を開始します。水面に出たら十分な浮力を確保し、水面移動で、岸に戻るか、ボートを目指して泳いでください。水中で探すこと、安全停止をすること、再度潜降することは禁止しています。

このルールはみんなわかっているようで、実際の場面に出くわすとほとんどのダイバーが水中で探し始めます。逸れた時の手順は絶対に守るようにしてください。

エア切れになった時の対処法

「実際エア切れになったら、とても落ち着いて対処できる気がしない」
そんな方に覚えておいてほしいこと

  • エアはいきなり吸えなくなるわけではない
  • 浮上していく間に吸えるようになる

エア切れをイメージすると、急にエアの供給が止まってしまうと思っていませんか?エア切れは突発的に起こるのではなく徐々に息が吸えなくなってくるんです。完全にゼロになるまでにだんだん呼吸抵抗が増していきます。

僕の感覚だと1分以上は渋い状態で呼吸ができるように感じます。

さらに、浮上を開始すると周囲の圧力が下がるので仮に完全に呼吸ができなくなったレギュレータでも数回の呼吸ができるようになります。

エア切れは突発的ではなくちゃんと予告があるということを忘れないでください。それを知っていれば、落ち着いて対処することができるはずです。

オープンウォーター講習ではエア切れ時の対処方法を習ったはずですが覚えていますか?もう一度復習してみましょう。

エアシェアアセント(ASA)

バックアップ空気源を使った浮上とも言います。インストラクターのオクトパスからエアをもらいながら浮上する方法です。この方法が一番安全度が高く安心して浮上することができます。

現場ではエア切れになる前にこの方法を使うことが多いです。

例えば、残圧が50になってしまったものの、安全に浮上できる条件が整っていない時は、エアをシェアします。エアももらいながら安全な浮上地点と水深まで移動します。安全停止に入ったら自分のエアに切り替えて浮上してもらう等、応用して使うこともあります。

エマージェンシースイミングアセント(ESA)

緊急スイミングアセントとも言います。ESAを行う条件はエアを貰えるダイバーが居ない時です。要は単独エア切れ時ということです。何らかの理由で単独でエア切れになってしまったらとりあえず浮上してください。

しかし、なるべくゆっくりです。エア切れなのにゆっくり?って思うかもしれませんがダイビングの浮上速度は1分間に18mまで許容されています。水深が9mだったら30秒息を吐き続けましょう。

ESAをやっているときは途中レギュレータから息が吸えないか確認してみてください。圧力が下がって多少の呼吸はできるはずです。

どうしても浮上息がもたないと思ったら迷わずウェイトを捨ててください。EBAに切り替えます。

エマージェンシーボイヤンシーアセント(EBA)

緊急浮力浮上とも言います。これも単独でエアが切れた時の手順です。とても水面まで浮上できる深度では無いと思ったらウェイトを捨ててください。プラス浮力になるので勝手に浮いてきます。

浮上速度のコントロールが効かないので減圧症のリスクはありますが、そのまま水中にいるより「まし」という考え方です。加速しそうになったら仰向けになって両手を広げます。(フレアリング)こうすることで浮上速度を少しでも遅らせます。

EBAはウェイトを捨てているので、途中で意識を失っても自動的にプラス浮力になるのが良い点です。

定期的なトレーニングを怠らないように

このような緊急時の浮上方法は、オープンウォーターコースで習って以来、なかなか練習する機会がありません。

しかしいざという時は突然訪れるかもしれません。そんな時に体が勝手に動くように何度も繰り返し練習をして体に叩き込んでおきましょう。

サンライズで開催している1DAYコーチングは今まで習ってきたスキルに磨きをかけたり、忘れてしまったスキルを思い出したりすることができるコースです。このような緊急浮上スキルも練習することができるので、トレーニングをされたい方は、こちらのコースを利用してみてください。

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まとめ

まずはエアが切れないように予防することが第一。常に残圧確認を忘れず、インストラクター指定の残圧で必ず報告するようにしよう。

万が一エアが切れても焦らないこと。対処できる時間は十分すぎるほどあるので、インストラクターからエアをシェアしてもらおう。

単独でのエア切れは絶対に避けよう。逸れたら落ち着いてすぐに浮上を開始しよう。

万が一単独でエア切れになってしまった場合はウェイトを捨てて仰向けに浮上する方法もあることを覚えておこう。

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そーさん

インストラクター歴18年。沖縄で修行を積み、伊豆半島へと拠点を移す。伊豆のダイビングシーンに可能性を見出し、川奈を拠点にダイビングショップ【SUNla伊豆】を立ち上げる。現在はインストラクタートレーナー(インストラクターを教育できる最高資格)として若手インストラクターのコーチングだったり高度なダイビングのガイドやトレーニングを行っている。

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